「警備員を1人採用するのに、いくらかかっていますか」。この質問に、すぐ答えられる警備会社はほとんどありません。求人媒体に月いくら払っているかは分かっても、1人あたりの金額に直している会社が少ないからです。
採用単価が分からないままだと、どの求人にお金を足すか、どれを止めるかを勘で決めることになります。勘で決めると、たいてい「昔から使っている媒体」が残り、「本当は効いている求人」が止まります。逆に、この数字を1つ出すだけで、採用のお金の使い方は見違えるほど整理できます。
この記事では、採用単価の計算式と、私たちが親会社の警備会社で実際に採用単価を約10分の1にした下げ方を、順番に紹介します。
- 採用単価は「採用にかかった費用の合計 ÷ 採用できた人数」。割り算1つで今日から測れます
- 高くなる原因は「応募1件が高い」と「応募から採用までの途中で人が消える」の2つ。多くの会社は後者の方が大きい
- 親会社の警備会社では、記録→電話を速く→前日連絡→求人の取捨選択の順番で、約30万円が約3〜4万円になりました
採用単価の計算式は、割り算1つ
難しい話ではありません。
費用の合計には、求人媒体の掲載料・広告費・紹介手数料を入れます。たとえば年間300万円かけて10人採れていれば、1人あたり30万円です。
計算するときのコツは2つあります。1つ目は、期間を区切ること。「例えば直近6か月」と決めて、その間に払った費用と、その間に採れた人数で割ります。期間を決めないと、いつの費用といつの採用を比べているのか分からなくなります。
2つ目は、「採用できた人数」は内定を出した人数ではなく、実際に働き始めた人数で数えること。警備業では、内定を出しても初日に来ない、新任教育の途中で消える、ということが珍しくありません。帳簿の上の採用ではなく、現場に立った人数で割ってこそ、本当の単価が見えます。
まずこの数字を出すこと自体が、改善の第一歩です。測っていないものは、下げられません。電卓と、この半年の請求書があれば、今日の夕方には出せる数字です。血圧を測らずに健康管理ができないのと同じで、採用のお金も、測った日から管理が始まります。
「費用の合計」に何を入れるか
割り算の上側、費用の合計には、思ったより多くのものが入ります。忘れやすいものから挙げます。
- 求人媒体の掲載料——月額で払っているもの。使っていない月のぶんも費用です
- クリックや応募ごとに払う広告費——Indeedなどの運用型。月ごとの金額を足します
- 紹介会社への手数料——1人あたりの金額が大きいので忘れませんが、割り算に入れ忘れる会社は多いです
- 入社祝い金・友人紹介のお礼金——社内で払うお金も、採用のための費用です
- 求人原稿や写真の制作費——外注した場合はここに足します
逆に、最初のうちは入れなくてよいものもあります。応募対応にかかった社員の人件費です。厳密に言えば費用ですが、時間の記録が難しく、計算が続かなくなります。まずは「外に払ったお金」だけで始めてください。それでも判断には十分使えます。計算のやり方を毎回そろえておけば、月ごとの比較が正しくできます。
例えば、掲載料が月5万円、運用型広告が月3万円、この半年で紹介手数料を1回60万円払ったとします。半年の費用は5万×6か月+3万×6か月+60万=108万円。この間に働き始めた人が4人なら、採用単価は27万円です。こうして並べると、「どこに一番払っているか」も同時に見えてきます。
採用単価が高くなる、2つの原因
原因1:応募1件あたりの費用が高い
同じお金で応募が2倍集まれば、採用単価は半分に近づきます。求人の文章が「誰に向けたものか」決まっていないと、応募単価は上がり続けます。シニアに来てほしいのか、若手に来てほしいのかで、書くべき言葉はまったく違うからです。私たちの実測では、広告を7種類つくって出し比べることで、応募1件あたりの広告費を大きく下げられました。1本の完璧な求人を狙うより、複数出して数字で選ぶ方が、確実に安くなります。どの相手にどんな言葉が響くかは、机の上で考えても分かりません。出してみて、応募の数で答え合わせをするのが早道です。
原因2:応募から採用までの途中で人が消えている
実はこちらの方が大きい会社がほとんどです。電話がつながらない、面接の約束をしたのに来ない——ここで人が消えると、集めるのに使ったお金がぜんぶ無駄になります。
バケツに例えると分かりやすいと思います。応募を集めるのは、バケツに水を注ぐこと。途中で人が消えるのは、バケツの底の穴です。穴をふさがないまま水を増やしても、たまる水はわずかしか増えません。しかも注ぐ水(広告費)は増えているので、単価はかえって上がることさえあります。
※働き始める人数が4人→12人に変わった場合の試算例
この図の2つの状態は、広告費も応募数も同じです。違うのは、応募のあとに何人残ったかだけ。採用単価を下げる主戦場は、求人の外ではなく、応募が来たあとの社内にあります。
私たちが実測で確認した、下げ方の順番
親会社の警備会社で実際にやった順番です。上から順に取り組んでください。
- 記録を始める——応募1件ごとに、どの求人から来て、何分後に電話して、どこで消えたかを書き残す
- 応募への電話を速くする——求職者は平均8.8社に応募しています(マイナビ「転職動向調査2024年版」)。先につながった会社が勝ちます
- 面接の前日・当日に連絡する——約束した人の3〜4割が来ない、はよくあることです。ここは電話1本で直ります
- 効いた求人だけ残す——記録があれば、お金を足す場所と止める場所が分かります
1つずつ補足します。まず記録。項目は「応募日時・名前・どの求人から・電話した時刻・結果」の5つで十分です。立派な表を作る必要はありません。大事なのは、応募が来たその日から書き始めることです。記録がないと、このあとのすべての打ち手が「効いた気がする」で終わってしまいます。
次に電話の速さ。8.8社に応募している人にとって、あなたの会社は9社のうちの1社にすぎません。数時間後の電話では、先につながった会社と話が進んでいます。私たちの親会社では、応募から13分で初回電話をかける体制にしました。応募の通知に気づける仕組みさえ作れば、特別な道具はいりません。「夜の応募には翌朝一番にかける」と決めておくだけでも、何も決めていない状態とは大きな差がつきます。
3つ目の前日・当日連絡。私たちの実測では、面接の約束をした人の約4割が当日に来ませんでした。連絡は「明日の面接、お待ちしています。場所は〇〇です」という電話やSMSを1本入れるだけです。費用はほぼゼロなのに、面接に来る人数が目に見えて変わります。詳しいやり方は面接ドタキャンを減らす方法にまとめています。
4つ目の取捨選択は、記録が2〜3か月たまってからで構いません。求人ごとに「応募が何件、働き始めた人が何人」を並べると、応募は多いのに1人も残らない求人が見つかります。そこを止めて、残った求人にお金を寄せます。総額を増やさなくても、配分を変えるだけで採れる人数は変わります。
この順番で直した結果、親会社の警備会社では採用単価が約30万円から約3〜4万円になり、月6名を採用できる状態になりました。詳しい経緯は警備員の採用がうまくいかない3つの理由と直し方もどうぞ。
採用単価だけでなく「面接単価」も見る
採用単価には弱点が1つあります。採用の人数が少ない会社では、数字が動くのが遅いことです。月に1人しか採れていないと、1か月たっても割り算の下側が1しか増えず、改善が効いているのか分かりません。
そこで、途中の目盛りとして面接単価を一緒に見ることをおすすめします。計算はやはり割り算1つで、「費用の合計 ÷ 面接に来た人数」です。例えば広告費10万円で面接に2人来たなら、面接単価は5万円。前日連絡を始めて面接に4人来るようになれば、同じ10万円でも面接単価は2万5千円に下がります。面接は採用より件数が多いので、打った手が効いたかどうかが早く分かります。考え方の詳細は面接単価の話で解説しています。
記録のつけ方は、最初は紙でもエクセルでも構いません。ただし応募の件数が増えてくると、誰がいつ電話したかが追えなくなり、記入も漏れ始めます。エクセル管理の限界と切り替えの目安はエクセル採用管理の限界にまとめました。
よくある質問
Q. 警備業界の採用単価の相場はいくらですか?
A. 相場の数字は、地域・職種・使う媒体で大きく変わるため、一律にいくらとは言えません。それに、他社との比較よりも大事なのは自社の先月との比較です。まず自社の数字を出し、毎月同じ計算式で並べてください。下がっているか上がっているかが、いちばん信頼できる物差しになります。
Q. 紹介会社の手数料は高い気がします。媒体と比べてどう考えればいいですか?
A. 「1人あたりいくらか」という同じ土俵に載せて比べてください。媒体は掲載料を払っても採れなければ費用だけ残りますが、紹介は働き始めた人数に対して払います。どちらが得かは会社の状況によるので、それぞれの「払った額 ÷ 働き始めた人数」を出して並べるのが公平です。
Q. 効いていない求人は、すぐ全部止めるべきですか?
A. 記録がたまる前に勘で止めるのは危険です。応募が少なくても、働き始める率が高い求人があります。逆に、応募はにぎやかでも1人も残らない求人もあります。2〜3か月ぶんの記録で「応募数」と「働き始めた人数」を求人ごとに見てから、止めるものを決めてください。
Q. 忙しくて、記録をつける時間がありません。
A. 1件1行、5項目だけにしてください。応募日時・名前・どの求人から・電話した時刻・結果。書くのは1件あたり1分もかかりません。事務所の電話の横に表を置いておくと、忘れずに続きます。全部を完璧に記録するより、この5つを全件つける方が、ずっと役に立ちます。
Q. 取り組みを始めてから、どのくらいで単価は下がりますか?
A. 一概には言えませんが、手ごたえの出る早さには順番があります。電話を速くすることと前日連絡は、始めたその月から面接に来る人数に表れやすい打ち手です。求人の取捨選択は記録がたまってからなので、数か月単位で見てください。
Q. 入社祝い金を出せば、単価は下がりますか?
A. 応募が増えることはありますが、祝い金も採用費用ですから割り算の上側が増えます。途中で人が消える問題を直さないまま祝い金だけ足すと、単価が下がらないどころか上がることもあります。順番としては、まず穴をふさいでからです。
まとめ
採用単価は「採用にかかった費用の合計 ÷ 採用できた人数」。割り算1つで、今日から測れます。費用には掲載料・広告費・紹介手数料に加えて、祝い金や制作費も忘れずに入れてください。
そして下げる鍵は、集めることより来た人を落とさないことにあります。記録を始める、電話を速くする、前日に連絡する、効いた求人だけ残す——この順番で、親会社の警備会社は約30万円を約3〜4万円にしました。
次の一歩は、直近6か月の請求書と採用人数を書き出して、割り算を1回することです。高いか安いかの判断は、そのあとで構いません。その1つの数字が、求人を選ぶときも、紹介会社と話すときも、これからのすべての判断の出発点になります。
