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警備業の人手不足はどれくらい深刻か——公的な統計の読み方

数字で見る

2026年8月26日|はやぶさ採用編集部

「警備業界は人手不足」。誰もがそう言いますが、どれくらい深刻なのかを数字で説明できる人は多くありません。感覚で語ると、対策も感覚になります。「最近応募が減った気がする」「若い人が来ない気がする」——気がする、のままでは、打ち手も当てずっぽうになってしまいます。

今回は、警備会社の経営者が押さえておきたい公的な統計と、その読み方を紹介します。統計というと難しそうに聞こえますが、見るべき資料は実は数えるほどしかありません。しかも、どれも無料で誰でも見られます。

ひとつお断りしておくと、数字そのものは毎年変わります。この記事に「今年の数字」を書いても、来年には古くなってしまう。だからこの記事では、「どこを見るか」「どう読むか」に絞ります。この読み方さえ身につけば、何年たっても自分の目で業界の今を確かめられます。

この記事の要点
  • 基本の資料は2つだけ。警察庁の「警備業の概況」と、厚生労働省の職業別の有効求人倍率
  • 数字は「全国」と「地元」を分けて見る。自社の商圏の数字まで確かめる
  • 統計は「業界が厳しいから仕方ない」の言い訳ではなく、自社の作戦を決めるために使う
  • 年に1回、統計と自社の記録を見比べる習慣をつくると、打ち手が自然と見えてくる

まず見る:警察庁の「警備業の概況」

警察庁は毎年、警備業の概況を公表しています。インターネットで「警備業の概況」と検索すれば、警察庁のページから最新版が見られます。業界の体温計として、一番の基本資料です。

何が載っているか

警備業者の数、警備員の数、常用と臨時の内訳、年齢構成、業務の区分(施設警備、交通誘導、輸送、身辺警備など)ごとの様子。つまり「この業界にいま、どんな会社と、どんな人が、どれだけいるか」が一枚で分かります。

とくに見てほしいのは年齢構成

数ある項目の中で、経営者にとって一番大事なのは年齢構成です。読み方は簡単で、自社の隊員名簿を年代別に数えて、業界全体の構成と見比べるだけ。自社のほうが高齢に寄っているなら、10年後に主力が一斉に引退する姿が見えてきます。逆に、業界全体が高齢化しているなら、シニアの力をどう借りるかが業界共通の宿題だと分かります。シニアに長く働いてもらう工夫は別の記事で詳しく書いています。

1年分ではなく、数年分を並べる

もうひとつのコツは、最新版だけでなく数年分をさかのぼって並べることです。警備員の数が増えているのか減っているのか、年齢構成がどちらに動いているのか。1年分の数字は「点」ですが、数年並べると「線」になり、業界がどこへ向かっているかが読めます。過去の年の資料も同じように公開されています。

次に見る:ハローワークの有効求人倍率

厚生労働省は毎月、職業別の有効求人倍率を公表しています。有効求人倍率とは、求職者1人に対して求人が何件あるかを示す数字です。倍率が1を超えていれば、仕事を探す人より求人のほうが多い、つまり「人の取り合い」が起きている状態です。

「保安の職業」の欄を見る

職業別の表の中に「保安の職業」という区分があります。警備員はここに含まれます。この欄の倍率を見れば、警備の仕事がどれだけ人を取り合っているかが分かります。全職業の平均の欄と見比べると、警備が他の仕事と比べてどの位置にいるのかもつかめます。

倍率が高いほど「待ちの採用」は不利

倍率が高いということは、求職者から見れば選び放題ということです。実際、マイナビの転職動向調査2024年版では、転職した人は平均8.8社に応募し、3.6社の面接を受けています。応募者は最初から複数の会社を比べているのです。だからこそ、倍率が高い職種ほど、こちらから迎えに行く採用——応募への即対応、連絡がつかない人への追いかけ、社員の紹介制度——の重要度が上がります。求人票を出して待っているだけでは、速い会社に先を越されます。

都道府県別の数字で「自社の商圏」を知る

全国の数字とあわせて、各都道府県の労働局が出している地域別の数字も見てください。同じ警備でも、都市部と地方では人の取り合いの激しさがまったく違います。自社が隊員を募集する地域の倍率こそが、自社にとっての「本当の相場」です。

なお、有効求人倍率はあくまで「ハローワークに出た求人と求職者」の集計です。求人サイトや紹介会社を通じた動きは含まれません。それでも、地域の人の取り合いの温度を測る物差しとしては十分に役立ちます。数字の性質を知ったうえで使う、というのも統計の読み方のひとつです。

あわせて見ると役に立つ資料

基本の2つに慣れてきたら、次の資料も年に1回のぞいてみると視野が広がります。いずれも無料です。

賃金の相場を知る資料。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、職種別・地域別の賃金の水準が公表されています。自社の給与が世間の相場とずれていないか、確かめる物差しになります。給与を上げられなくても、相場を知ったうえで手当や働きやすさで補う作戦が立てられます。資格手当の考え方は別の記事にまとめています。

人の出入りを知る資料。同じく厚生労働省の「雇用動向調査」では、産業ごとに、どれだけの人が入り、どれだけの人が辞めているかが分かります。採用と同じくらい、辞めさせない工夫が大事だと実感できる資料です。

業界団体の資料。全国警備業協会や各都道府県の警備業協会も、業界向けの資料や調査を出しています。加盟していれば手に入るものもあるので、案内が来たら捨てずに目を通してみてください。

統計を読むときの3つの注意

統計を読むときの注意
最新版を見る
検索で出た古い年の記事を今の数字と思い込まない
全国と地元を分ける
全国平均と自社の商圏は別。都道府県の数字まで見る
出どころを確かめる
まとめ記事ではなく、官公庁の元資料にあたる

1つめ、最新版を見る。インターネットで検索すると、何年も前の数字を載せたままの記事が上位に出てくることがあります。記事の日付と、引用されている統計の年をかならず確かめてください。数年前の数字を「今の数字」だと思い込むと、判断を誤ります。

2つめ、全国と地元を分ける。全国平均は業界全体の傾向を知るには便利ですが、自社の採用に直接効くのは商圏の数字です。「全国では厳しいが、うちの地域はもっと厳しい」ということも、その逆もあります。全国→都道府県の順に、二段構えで見るのが基本です。

3つめ、出どころを確かめる。「警備員 人手不足」で検索して出てくるまとめ記事は、便利な半面、数字の引き写し間違いや古い数字の使い回しが混ざっていることがあります。大事な判断に使う数字は、警察庁・厚生労働省など官公庁の元資料で確かめる。この一手間が、経営判断の土台を固くします。

統計を自社の「作戦」に変える5つの手順

統計は、見て終わりでは意味がありません。自社の打ち手につなげてこそ価値があります。手順は次の5つです。

手順1:年に1回、「統計を見る日」を決める。おすすめは求人を強化する時期の前です。カレンダーに書いてしまえば、忘れません。所要時間は慣れれば1時間もかかりません。

手順2:自社の数字を並べる。この1年の応募数、面接に来た人数、採用した人数、かけた広告費。手元の記録から拾い出します。記録がない場合は、まず記録のはじめ方から整えてください。採用単価の計算のしかたはこちらの記事にまとめています。

手順3:業界の数字と自社の数字のズレを探す。たとえば、業界全体の年齢構成より自社が高齢に寄っていないか。地元の求人倍率が高いのに、自社は「掲載して待つだけ」の採用になっていないか。ズレこそが、次に手を打つべき場所です。ズレが見つからなければ、それはそれで「うちは業界並みにはやれている」という確認になります。

手順4:打ち手を1つだけ決める。あれもこれもやろうとすると続きません。「応募の電話に必ずその日のうちに折り返す」「求人票の写真を撮り直す」など、1つに絞って3か月続けます。

手順5:翌年、また見比べる。業界の数字と自社の数字を、去年と並べて見る。打ち手が効いたかどうかは、この見比べで初めて分かります。例えば広告費10万円で面接に2人来たなら、面接1人あたり5万円。この数字が去年より下がっていれば、作戦は当たっています。

数字は「言い訳」ではなく「作戦」のために

統計を見て「業界全体が人手不足だから、うちが採れないのも仕方ない」で終えては意味がありません。むしろ逆です。みんなが採れていないからこそ、対応の速さや求人の書き方といった基本で差がつくのです。

実際、私たちの親会社の警備会社では、応募から13分で最初の電話をかける体制と、応募対応の仕組みを整えることで、月6名の採用を続けています。市場が厳しいことと、自社が採れないことは、別の問題です。市場の厳しさは統計で知り、自社の課題は自社の記録で知る。この2つを混ぜないことが、統計を読む一番の目的だと言ってもいいくらいです。

統計はいわば天気予報です。雨が降ると分かれば、傘を持って出かける。業界に強い向かい風が吹いていると分かれば、風上に向かう装備——即対応、紹介制度、求人票の磨き込み——を整える。天気のせいにして家にこもるためのものではありません。

よくある質問

Q. 統計はどこで手に入りますか?お金はかかりますか?

すべて無料です。インターネットで「警備業の概況」「職業別 有効求人倍率」と検索すれば、警察庁・厚生労働省のページから誰でも見られます。会員登録も不要です。官公庁のページは見た目が地味なので不安になるかもしれませんが、地味なページこそが元資料の目印です。

Q. パソコンが苦手でも見られますか?

大丈夫です。資料の多くは概要版が用意されていて、表を数枚ながめるだけでも要点はつかめます。印刷して赤ペンを持って読むのもおすすめです。また、地域の求人倍率は、ハローワークの窓口で「この地域の保安の職業の求人倍率を知りたい」と聞けば教えてもらえます。

Q. どのくらいの頻度で見ればいいですか?

警備業の概況は年1回で十分です。有効求人倍率は毎月出ますが、毎月追う必要はなく、求人を出す前に直近の数字を確かめる、という使い方で足ります。

Q. 全国の数字と地元の数字、どちらを信じればいいですか?

どちらも本当の数字ですが、役割が違います。全国は業界全体の流れを知るため、地元は自社の作戦を決めるため。採用の条件や打ち手を決めるときは、地元の数字を優先してください。

Q. 統計を見ても、何をすればいいか分かりません。

統計だけを見ているとそうなります。必ず自社の記録とセットで見てください。業界の数字は「比べる相手」であって、答えそのものではありません。自社の応募数・面接率・採用単価と見比べて初めて、「うちはここが弱い」が見えてきます。

Q. 民間のまとめ記事やニュースの数字は信用していいですか?

入り口としては便利ですが、判断の根拠にするなら元資料にあたってください。引用の過程で年がずれたり、区分の違う数字が混ざったりすることがあります。「出どころはどこか」を確かめる癖が、経営者の身を守ります。

まとめ

警備業の人手不足を語るのに、難しい統計の知識は要りません。見るのは基本の2つ。警察庁の「警備業の概況」で業界の姿と年齢構成を、厚生労働省の職業別有効求人倍率で人の取り合いの激しさを。どちらも無料で、1時間あれば読めます。

そして、統計は言い訳のためではなく、作戦のために使う。年に1回、業界の数字と自社の数字(記録のはじめ方)を見比べる習慣をつくれば、次の打ち手は自然と見えてきます。まずはカレンダーに「統計を見る日」を書き込むところから始めてみてください。

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