「人材紹介と採用代行って、何が違うの?」——採用のご相談で、いちばんよく聞かれる質問のひとつです。名前は似ていますが、仕組みもお金の払い方も、得意なことも別物です。ここを知らずに契約すると、「思っていたのと違う」「払ったお金に見合わない」というすれ違いが起きやすくなります。
ざっくり言うと、人材紹介は「人を連れてくるサービス」、採用代行は「採用の仕事を代わりにやるサービス」です。八百屋にたとえるなら、紹介は「野菜そのものを買う」こと、代行は「畑仕事を手伝ってもらう」ことに近いです。買えばすぐ食べられますが、毎回お金がかかります。畑を整えるのは時間がかかりますが、いちど整えば収穫が続きます。
この記事では、警備会社の採用を支援してきた立場から、ふたつの違いをお金・早さ・成果の形に分けてかみ砕きます。そのうえで、あなたの会社はどちらを使うべきか(あるいは両方か)の目安と、契約前に確認しておきたいことまで整理しました。営業の電話を受けたときに、慌てず判断できる状態を目指しましょう。
- 人材紹介は成功報酬で「人」を買う仕組み。決まるまでが早い一方、1人あたりの費用は高めになりがち
- 採用代行は月額で「採用の作業と体制」を任せる仕組み。毎月採り続けたい会社に向く
- 急ぎの欠員は紹介、毎月の採用は代行、と役割で使い分ける。併用も有効
- 契約前には料金の仕組み・返金や解約の決まり・仕事の範囲を必ず確認する
人材紹介とは:人を連れてくるサービス
人材紹介は、紹介会社が集めた求職者の中から、条件に合う人をあなたの会社に引き合わせる仕組みです。国の許可(有料職業紹介事業の許可)を受けた会社だけが行える事業とされています。あなたの会社は、紹介された人と面接をして、採用するかどうかを決めるだけ。求人を出して応募を待つ手間は、原則かかりません。
お金の流れ:採用が決まったら払う「成功報酬」
料金は成功報酬が基本で、採用が決まったときに1人あたりいくらという形で支払います。逆に言えば、採用が決まらなければ費用はかかりません。この「外れがない」安心感が紹介の良さです。ただし、1人あたりの金額は高めになりがちです。例えば1人の採用に50万円の紹介手数料がかかるとすると、年に4人を紹介で採れば200万円です。欠員のたびに紹介へ頼る形が続くと、支出は積み上がっていきます。
向いている場面
すぐに人がほしいとき、施設警備の有資格者など条件の合う人をピンポイントで採りたいとき、採用そのものが年に数回しかないときに向いています。自社で求人を出して応募を待つよりも、すでに「働きたい」と手を挙げている人に会えるため、決まるまでが早いのが強みです。
気をつけたい点
紹介される人数は、紹介会社がそのとき抱えている求職者しだいです。「頼んだのに何か月も紹介が来ない」ということも起こります。また、多くの紹介会社では、入社後すぐに辞めてしまった場合に手数料の一部が戻る決まり(返金規定)を設けているのが一般的とされています。返金の期間と割合は会社によって違うので、契約前に必ず確認しましょう。
採用代行とは:採用の仕事を代わりにやるサービス
採用代行は、求人原稿づくり・応募対応の電話・面接の日程調整・応募者へのこまめな連絡といった、「採用の作業そのもの」を代わりに行う仕組みです。人を連れてくるのではなく、応募が来てから面接に座ってもらうまでの流れを整えて、回し続けるのが仕事です。
お金の流れ:毎月決まった額を払う「月額制」
料金は月額が基本です。応募が何人来ても対応できる体制を借りられるので、応募が多いほど1人あたりの費用は下がっていきます。私たちの親会社の警備会社では、応募から13分で初回の電話をかける体制と、つながらなかった人を追いかける仕組みを作った結果、採用単価が約30万円から約3〜4万円まで下がり、月6名の採用が続いています。こうした「体制づくり」こそ、代行の得意分野です。
なぜ「作業の代行」で採用が増えるのか
「作業を代わってもらうだけで、そんなに変わるの?」と思われるかもしれません。ところが、採用がうまくいかない原因の多くは、実は応募が来たあとにあります。マイナビの転職動向調査2024年版によると、転職した人は平均8.8社に応募し、面接まで進むのは3.6社です。つまり応募者は何社も天びんにかけていて、連絡が遅い会社から順に選択肢から消えていきます。電話に出られない、折り返しが翌日になる——それだけで応募者は他社へ流れてしまうのです。この「応募後の取りこぼし」を専門の体制でふさぐのが代行の役割です。くわしくは応募が来ても面接につながらない警備会社の共通点で書いています。
気をつけたい点
代行は「来た応募を面接・採用につなげる」仕組みなので、そもそも応募がほとんど無い状態では力を発揮しにくい面があります。求人をどこに出すかの見直しとセットで考えるのが基本です。また月額制なので、採用がゼロの月でも費用はかかります。だからこそ、何をどこまでやってくれるのか(仕事の範囲)を契約前にはっきりさせることが大切です。
ひと目でわかる5つの違い
ここまでの話を、表にまとめて見比べてみましょう。
| 比べるところ | 人材紹介 | 採用代行 |
|---|---|---|
| 買っているもの | 人そのもの | 採用の作業と体制 |
| お金の払い方 | 成功報酬(決まったら払う) | 月額(毎月決まった額) |
| 費用の出方 | 採用のたびに大きく出る | 毎月一定。採るほど1人あたりは割安に |
| 早さ | 合う人がいれば早い | 体制づくりに少し時間がかかる |
| 会社に残るもの | 採用した人 | 採用の仕組みと数字の記録 |
ひとことで言えば、紹介は「結果を買う」、代行は「過程を任せる」サービスです。どちらが上という話ではなく、そもそも買っているものが違います。だから比べるときは値段の大小だけでなく、「いま自分の会社に足りないのは人なのか、体制なのか」を先に考える必要があります。
使い分けの目安:あなたの会社はどっち?
目安は「採用の回数」と「応募対応の余力」のふたつで考えるとわかりやすいです。回数とは、年に何回・何人採る必要があるか。余力とは、応募の電話にすぐ出て、面接まで追いかける手が社内にあるかどうかです。このふたつを紙に書き出してから下の図を見ると、自分の会社がどこに当てはまるかが見えてきます。
・今月中に1〜2人ほしい
・資格者をピンポイントで
・採用は年に数回だけ
・毎月続けて採りたい
・応募対応が回っていない
・採用の仕組みを作りたい
・体制は代行で作りつつ
・急ぎの欠員は紹介で埋める
年に数回、欠員が出たときだけ採るなら、紹介で十分です。逆に、現場の拡大や退職の補充で毎月のように採り続ける必要があるなら、そのたびに成功報酬を払うより、月額で体制を作ったほうが1人あたりの費用は下がっていきます。費用の比べ方は警備員の採用単価の計算方法と下げ方にまとめています。
併用も有効です。ふだんの採用は代行で回しながら、急な欠員や有資格者の穴だけを紹介で埋める形です。ふだんの食事は自炊で整えて、急な来客のときだけ出前を取る、という感覚に近いと思います。全部を出前にすると家計が持たないように、全部を紹介でまかなうと採用費はふくらみます。
契約前に確認しておきたい5つのこと
紹介でも代行でも、契約前に次の5つを聞いておくと、「思っていたのと違う」をほとんど防げます。
①料金の仕組みと、追加でかかるお金
紹介なら、1人あたりの手数料と、その計算のもとになる金額を確認します。代行なら、月額に含まれる範囲と、求人広告費など別にかかるお金を確認します。月々の支払いだけでなく、総額でいくらになるのかを必ず見ましょう。
②返金・解約の決まり
紹介なら、入社後すぐに辞めた場合の返金の期間と割合。代行なら、契約期間の縛りと、途中でやめるときの条件。口頭の説明だけで済ませず、書面で残してもらうのが安全です。あとで言った言わないになりやすいところだからです。
③仕事の範囲はどこからどこまでか
代行では特に大事な点です。求人原稿は書いてくれるのか、応募の電話には何時まで出てくれるのか、面接の日程調整や前日の確認連絡までやるのか。範囲があいまいなまま始めると、抜けた作業が結局あなたの会社に戻ってきます。
④警備業界をわかっているか
警備には、夜勤や施設ごとの勤務条件、新任教育まで人をつなぎとめる難しさなど、業界ならではの事情があります。面接の約束をしても当日来ない人が多いこと(親会社の警備会社では、面接約束の約4割が当日不参加でした)を前提に、前日確認や追いかけの連絡まで考えてくれる相手かどうかを見てください。
⑤数字で報告してくれるか
応募が何件あって、電話がつながったのは何件で、面接に来たのは何人か。毎月の報告に数字があるかどうかで、続けるか見直すかを判断できるかが決まります。面接1人あたりにいくらかかったかという見方は、面接単価の考え方が参考になります。
よくある質問
Q. 結局、紹介と代行はどちらが安いのですか?
採用する人数によって答えが変わります。例えば1人の紹介手数料が50万円、代行が月20万円だとすると、年に1〜2人しか採らないなら紹介のほうが安く、毎月1人以上採り続けるなら代行のほうが1人あたりは安くなる計算です。「うちは年に何人採る予定か」から逆算するのが正しい比べ方です。
Q. 小さな警備会社でも採用代行は頼めますか?
頼めます。むしろ、専任の採用担当を置けない規模の会社ほど効果が出やすいと感じています。社長や管制の方が現場と兼務で応募対応をしている状態は、電話の取りこぼしがいちばん起きやすいからです。
Q. 紹介会社に頼めば、必ず人は来ますか?
来るとは限りません。紹介は「その会社が抱えている求職者」が元手なので、条件や地域の合う人がいなければ、紹介はゼロのままです。成功報酬なのでお金は減りませんが、時間は過ぎていきます。急ぎの欠員なら、複数の紹介会社に同時に声をかけておくのが現実的です。
Q. 代行に任せると、自社に採用の力が残らないのでは?
任せ方によります。丸投げで報告も無い形だと力は残りませんが、毎月数字の報告を受けて一緒に見直す形なら、「どの求人からどんな人が来て、どこで逃しているか」という記録が社内にたまっていきます。契約するときに、報告の形まで決めておきましょう。
Q. 面接のドタキャン対策もやってもらえますか?
代行の範囲によります。前日と当日の確認連絡、来られなかった人への日程の組み直しまで含むかどうかを確認してください。ドタキャンは連絡の工夫でかなり減らせます。くわしくは面接ドタキャンを減らす方法にまとめています。
Q. まず何から始めればいいですか?
今の採用の数字を出すことです。直近1年で、採用にいくら使って、応募が何件あって、何人採用できたか。この3つの数字がそろえば、紹介と代行のどちらが合うかは自然に見えてきます。数字が手元に無い場合は、その整理から始めるのが第一歩です。
まとめ:どちらが上ではなく、役割が違う
紹介は「人を買う」サービス、代行は「体制を作る」サービスです。急ぎの欠員をピンポイントで埋めたいなら紹介、毎月採り続ける力を会社に持たせたいなら代行、両にらみなら併用が目安になります。契約前には、料金の仕組み・返金や解約の決まり・仕事の範囲・業界理解・数字の報告の5つを確認してください。
長い目で見て採用コストを下げてくれるのは、体制づくりのほうです。応募への電話の早さ、つながらなかった人への追いかけ、面接までの段取り。こうした地味な作業の積み重ねが、採用単価を大きく変えます。まずは自社の採用の数字を出すところから始めてみてください。
