「応募は来ている。なのに、面接まで進まない」。警備会社の採用で、実はいちばん多い悩みがこれです。求人サイトを変えようか、広告費を増やそうか——そう考える前に、まず疑うべき場所があります。応募が来てから面接までの「連絡のやり方」です。
私たちは親会社の警備会社で、応募から面接、採用までの数字を実際に測ってきました。その中で見えてきたのは、面接につながらない会社には、求人の中身より手前に共通のつまずきがある、ということです。この記事では、その共通点を3つ紹介し、今週から直せる手順まで具体的にお伝えします。
- 求職者は平均8.8社に応募し、面接を受けるのは3.6社(マイナビ転職動向調査2024年版)。折り返しが翌日以降だと、先に電話した他社に取られます。
- 一度電話がつながらないだけで追いかけをやめると、広告費で集めた応募者がそのまま消えます。
- 面接を約束しても、約4割は当日に来ません(親会社の実測)。前日・当日のひと声で変わります。
- 直す順番は「速く・しつこく・前日に」。お金はほとんどかかりません。
共通点1:応募への折り返しが翌日以降になっている
求職者は1社だけに応募していません。マイナビの転職動向調査2024年版によると、求職者は平均8.8社に応募し、実際に面接を受けるのは3.6社です。つまり応募が来た時点では、まだ半分も勝っていません。先に電話がつながった会社が、面接まで連れていきます。
なぜ「明日かけよう」で負けるのか
警備の仕事に応募する方の多くは、今の仕事の休憩時間や帰り道に、スマホから応募しています。応募した直後が、いちばん気持ちが動いている瞬間です。ところが翌日になると、気持ちは落ち着き、別の会社からの電話も入ってきます。畑の野菜と同じで、採りごろを逃すと同じものは二度と手に入りません。
「事務の手が空いたらまとめて折り返す」「夕方に一括で電話する」——このやり方は、一見効率が良さそうで、実は応募者を逃す仕組みになっています。しかも困ったことに、逃した応募者は「連絡が来なかった」とは言ってくれません。ただ静かに他社へ行くだけです。だから、遅い折り返しの損は帳簿のどこにも出てこず、気づかないまま続いてしまうのです。
親会社では「応募から13分」で電話しています
私たちの親会社では、応募から初回の電話までの時間を分単位で測り、実測で13分での折り返しを実現しました。特別な機械が要るわけではありません。応募が入ったらすぐ担当者に通知が届くようにして、「後でまとめて」をやめただけです。それだけで、電話がつながる割合は目に見えて変わりました。
共通点2:一度つながらないと、それきりになっている
警備員に応募する方には、現在も別の仕事をしている方が多くいます。日中の1回の電話でつながらないのは、むしろ普通のことです。問題は、その1回で終わってしまうこと。「かけたけど出なかった」で処理済みにしてしまう会社が、実に多いのです。
「追いかけた」と言える最低ライン
電話に出なかったのは、断られたのとは違います。仕事中だった、着信に気づかなかった、知らない番号だから出なかった——理由はいくらでもあります。だから、時間帯を変えて数回かける。それでも出ない方には、SMSやLINEで文字の連絡を残す。ここまでやって、はじめて「追いかけた」と言えます。
文字の連絡は、たとえばこんな短いもので十分です。「〇〇警備の△△です。求人へのご応募ありがとうございます。お話しできる時間帯を、このままご返信ください」。これなら仕事中の方も、休憩時間に返せます。文字での連絡のやり方は採用でLINEを使う方法でくわしく説明しています。
つながらない応募者は「消えた広告費」です
応募を1件集めるには、求人広告のお金がかかっています。つながらなかった応募者をそのままにするのは、お金を払って集めた人を、玄関先で帰しているのと同じことです。電話番の人手が足りない場合の考え方は応募電話に出られないことで起きている損も参考にしてください。
共通点3:面接の約束をした後、当日まで連絡していない
面接の日程が決まると安心してしまいがちですが、実はここにも大きな穴があります。親会社の実測では、面接を約束した方の約4割が当日に来ませんでした。
※親会社の警備会社での実測(面接約束の約4割が不参加)
来ない理由の多くは「悪気のない忘れ」です
約束を破ろうと思って破る人は、ほとんどいません。日にちを忘れていた、場所が分からなくなった、行こうか迷っているうちに時間が過ぎた——そんな理由が大半です。とくに面接まで日が空くほど、気持ちは冷めていきます。約束した日の熱は、放っておけば下がる一方です。だからこそ、前日と当日にひと声かけるだけで、この数字は変わります。電話1本、SMS1通の話です。
前日の連絡は、たとえば「明日〇時にお待ちしています。場所はこちらです」と地図を添えるだけ。当日の朝にも「本日お待ちしています。道に迷ったらこの番号にお電話ください」とひと言。応募を1人増やす広告費と比べれば、どちらが安いかは明らかです。当日に来ない人を減らす工夫は面接のドタキャンを減らす方法にまとめています。
3つの共通点の根っこは「人」ではなく「仕組み」
ここまで読んで、「うちの事務員がさぼっているのか」と思った方がいたら、それは違います。折り返しが遅れるのも、追いかけが途切れるのも、前日連絡を忘れるのも、ほとんどの場合、担当者の怠慢ではありません。現場と兼務で電話に出られない、誰がいつ何をするか決まっていない、やったかどうかを誰も見ていない——つまり仕組みがないのです。
- 応募が来たらすぐ通知が届く
- 折り返す担当が決まっている
- 出なければ時間帯を変えて再連絡+文字を残す
- 面接の前日・当日にひと声かける
- 何分で折り返せたか数字で見ている
- 応募に気づくのがメール確認のとき
- 手が空いた人が折り返す
- 1回出なければ「連絡つかず」で終わり
- 日程が決まったら当日まで連絡しない
- 数字を測っていないので遅れに気づけない
左右を見比べると分かる通り、違いは才能でも根性でもなく、決めごとがあるかどうかだけです。決めごとは紙1枚で作れます。そして、お金の面でも差は大きくなります。例えば広告費10万円で応募が5人来たとします。折り返しが遅くて2人しか話せなければ、話せた1人あたり5万円。すぐ折り返して4人と話せれば、1人あたり2万5千円。同じ広告費でも、連絡のやり方だけで倍の差がつく計算です(あくまで架空の例ですが、仕組みの意味はこういうことです)。
今週からできる直し方:この順番で
全部を一度にやる必要はありません。効果の大きい順に、上から一つずつ整えてください。
手順1:応募の通知がすぐ届くようにする
求人サイトからの応募メールが、担当者の携帯にすぐ届くように設定します。「パソコンを開いたときに気づく」状態のままでは、何を決めても始まりません。多くの求人サイトには、応募をメールで知らせる設定があります。まずはそこから確認してください。
手順2:折り返しの担当と合図を決める
「応募が来たら誰が、どのくらいの速さで電話するか」を決めて、紙に書いて貼ります。担当者が現場に出ているときの代わりの人も決めておきます。「誰かがやるだろう」は、誰もやらないのと同じです。名前で決めるのが肝心です。
手順3:つながらないときの追いかけ方を型にする
「出なければ、時間帯を変えてかけ直す。あわせてSMSで一報を残す」というところまでを、ひとつの流れとして決めます。個人の気配り任せにしないのがコツです。
手順4:面接の前日・当日連絡を予定に組み込む
面接の日程を決めたその場で、前日連絡の予定も一緒に書き込みます。「思い出したらやる」ではなく「予定表に入っているからやる」に変えます。送る文面をあらかじめ決めておけば、当日は名前と時間を入れ替えるだけで済みます。
手順5:数字を測る
応募から何分で折り返せたか。約束した人のうち何人が来たか。この2つだけでも記録すると、どこで人が消えているかが見えてきます。ちなみに親会社では、こうした連絡の仕組みを整えた結果、採用単価は約30万円から約3〜4万円まで下がり、月6名の採用が続いています。数字の考え方は警備員の採用単価の計算方法と下げ方でくわしく説明しています。
よくある質問
Q. 折り返しは何分以内ならいいのでしょうか?
早いほど有利です。私たちの親会社は実測で13分でしたが、最初からそこを目指す必要はありません。まずは「当日中」を確実にし、慣れてきたら「気づいたらすぐ」に近づけてください。翌日と当日では、つながりやすさがまるで違います。
Q. 夜遅くに応募が来たらどうすればいいですか?
夜遅くの電話は、かえって印象を悪くします。まずSMSやLINEで「ご応募ありがとうございます。明日の午前中にお電話します」と一報だけ入れて、翌朝に電話するのがおすすめです。文字の一報があるだけで、翌朝の電話に出てもらいやすくなります。
Q. 何回も電話したら、しつこいと嫌われませんか?
電話に出なかったことと、断られたことは別です。時間帯を変えて数回かけ、あわせて文字の連絡を残す程度なら、しつこいとは受け取られません。むしろ「ちゃんと対応してくれる会社だ」という安心につながります。文字で「ご都合の良い時間を返信ください」と選択肢を渡せば、相手も気楽です。
Q. 前日に連絡して「やっぱり行きません」と言われたら、損ではありませんか?
損ではなく得です。当日に待ちぼうけになる時間がなくなり、面接官の予定も空きます。断る人は、連絡してもしなくても来ません。前日に分かるか、当日すっぽかされて分かるかの違いです。それに、迷っていた人が前日のひと声で「行きます」に変わることも珍しくありません。
Q. 人手が足りず、そもそも電話に出られません。
現場と兼務では、すぐの折り返しが難しいのは当然です。まずは文字の連絡だけでも自動で返る形を作る、応募対応の時間を1日の中で決めておく、といった工夫があります。それでも回らない場合は、応募対応を外部に任せるという選択肢もあります。大事なのは「出られないから仕方ない」で止めないことです。出られない前提で、それでも取りこぼさない形を作ることはできます。
Q. 求人票の中身は直さなくていいのですか?
求人票の改善ももちろん大事です。ただ、順番としては連絡のやり方が先です。せっかく求人票を良くして応募が増えても、折り返しが遅ければ、増えたぶんだけ取りこぼしも増えるからです。受け皿を整えてから、入り口を広げてください。
まとめ:直す順番は「速く・しつこく・前日に」
面接につながらない原因は、求人の中身より前に「連絡のやり方」にあることがほとんどです。①折り返しを速く ②つながるまで追いかける ③面接の前日・当日に連絡する。この3つはお金がほとんどかからず、今週から始められます。
まずは今日、直近の応募に何分で折り返せているかを確かめてみてください。そこが翌日以降になっていたら、伸びしろは大きいということです。応募を増やす努力は、受け皿が整ってこそ実を結びます。順番を間違えなければ、いま来ている応募の中に、採れるはずだった人が必ずいます。全体の流れは採用がうまくいかない3つの理由もあわせてどうぞ。
