「求人はどこに出せばいいの?」——警備会社の社長さんから、いちばんよく聞かれる質問です。答えは会社の状況によって変わりますが、考える順番は決まっています。無料の受け皿を先に整えて、有料はその後。この順番を逆にすると、広告費がそのまま漏れていきます。
穴の空いたバケツに水を注ぐところを想像してください。有料広告は「水を増やす蛇口」です。バケツの穴——つまり応募が来ても取りこぼす体制のまま蛇口を開けば、増えた水はそのまま流れ出ます。まず穴をふさぐ。それが無料の媒体を整えるという作業です。
この記事では、無料と有料それぞれの媒体の特徴と、どの順番で・どういう条件で使い分けるかを、警備業の採用に絞ってお話しします。
- お金をかける前に「ハローワーク・求人検索サイトの無料枠・自社採用ページ」の三本柱を整える
- 有料に進んでよいのは、無料経路の応募にすばやく対応できる体制ができてから
- 媒体の成績は「応募数」ではなく「採用数」で比べる。警備は媒体ごとの差がはっきり出る
まず無料の三本柱を立てる
無料。中高年層に強い。書き方しだいで応募は変わる
Indeedなどの無料枠。自社ページと連携できる
全媒体の受け皿。ここが貧弱だと他が全部弱る
三本柱は、どれか一つを選ぶものではありません。三つそろって初めて力を発揮します。ハローワークは求人票を届ける役、求人検索サイトはネットで探す人に見つけてもらう役、自社の採用ページは「この会社で働いて大丈夫か」を確かめに来た人を受け止める役。それぞれ役割が違うからです。どれか一本が欠けると、他の二本の力も落ちます。例えば、ハローワークで求人票を見た人が会社名を検索して採用ページが見つからなければ、そこで止まってしまう、という具合です。
とくに自社の採用ページは全部の土台です。どの媒体で求人を見た人も、応募の前に会社名で検索します。そこに情報がなければ、それだけで候補から外れます。求人票でどれだけ良いことを書いても、検索して何も出てこない会社には、人は不安を感じるものです。逆に、仕事内容や先輩の顔が見えるページが一枚あるだけで、「ちゃんとした会社だ」という安心につながります。
三本柱それぞれの整え方
ハローワーク——無料で中高年に届く、いちばんの主戦場
警備の仕事を探す中高年の方は、いまでもハローワークをよく使います。無料で出せるのに、書き方を工夫している会社は多くありません。つまり、求人票の文章を少し磨くだけで、周りの会社より目立てる余地が大きいということです。仕事内容の欄に「施設警備」とだけ書くのではなく、「どこで・何を・どんな一日で」を具体的に書く。それだけで読まれ方が変わります。詳しい書き方はハローワーク求人票の書き方で掘り下げています。
求人検索サイトの無料枠——ネットで探す人への入り口
Indeedなどの求人検索サイトには、無料で掲載できる枠があります。スマホで「警備 求人 (地域名)」と検索する人に届くのは、主にこの経路です。無料枠は掲載順位の面で有料に劣りますが、まずここに求人を置いておかないと、有料に進んだときに「無料と比べてどれだけ増えたか」の比較もできません。無料で出してみて、どんな応募が来るかを知る。これが最初の一歩です。無料枠で埋もれないための工夫はIndeedで埋もれる求人の共通点にまとめました。
自社の採用ページ——全媒体の受け皿
立派なホームページは要りません。必要なのは、仕事内容・給与・勤務地・職場の雰囲気が分かる採用ページが一枚あることです。ここが空っぽだと、ハローワークや検索サイトから来た人が最後の確認で離れてしまい、せっかくの応募が目減りします。大事なのは見た目の立派さではなく、応募する人が知りたいことが書いてあるかどうかです。
有料に進む条件は「無料で応募対応が回っていること」
有料媒体や広告は、応募を増やす道具です。ところが応募への折り返しが遅い会社が広告費を積むと、「対応しきれない応募」をお金で買うことになります。まず無料経路の応募にきちんと対応できる体制を作る。応募から折り返しまでの動きが整ってから、有料で蛇口を開く。この順番です。
なぜ折り返しの速さがそれほど大事なのか。応募する側は、一社だけに応募しているわけではないからです。マイナビの転職動向調査2024年版によると、転職した人は平均で8.8社に応募し、3.6社の面接を受けています。つまりあなたの会社の求人は、常に他社と比べられている。応募した本人も数日たてば「どこに応募したか」があいまいになりますから、先に電話をかけてきた会社から面接が決まっていくのが実態です。どの媒体に出すかを考える前に、来た応募を逃さない構えを作る。遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。
私たちの親会社の警備会社が採用単価を約30万円から約3〜4万円まで下げられたのも、広告の上手さより先に、応募対応の速さを作ったからでした。具体的には、応募が入ってから13分で初回の電話をかける体制です。この土台があって初めて、有料媒体のお金が採用という結果に変わります。
逆に言えば、次のような状態のまま有料に進むのは待ったほうがよい、ということです。応募の通知に気づくのが翌日になる。電話番が現場に出ていて折り返せない。誰がどの応募者に連絡したか分からなくなる。心当たりがあれば、先に体制づくりです。
体制づくりといっても、人を増やす話ではありません。決めるのは三つだけです。第一に、応募の通知が誰の携帯に届くかを決める。第二に、折り返しの担当を決めて、出られないときの二番手も決めておく。第三に、電話で何を話すかを紙一枚にしておく。この三つが決まっているだけで、応募から面接までの取りこぼしは目に見えて減ります。
有料媒体の種類と選び方
体制が整ったら、有料の出番です。有料媒体は大きく三つの型に分かれます。それぞれお金の払い方が違うので、性格を知ってから選びましょう。
求人サイトに期間を決めて掲載。応募がゼロでも料金は同じ
Indeed有料枠など。見られた分だけ払う。予算を自分で決められる
人材紹介など。採用が決まったときだけ払う。一人あたりは高め
掲載課金型は、出した瞬間に料金が確定します。応募が来ても来なくても同じお金がかかるので、求人の文章と写真の準備ができていない段階で使うと、いちばん損をしやすい型です。クリック課金型は少額から始められて、途中で止められるのが利点です。初めての有料はここから試すのが向いています。成功報酬型は、採用できるまでお金がかからない代わりに、決まったときの支払いが大きめです。急ぎで一人ほしいときや、無料と広告で埋まらない枠に向きます。紹介と代行の違いは人材紹介と採用代行の違いで詳しく説明しています。
どの型でも共通する注意が一つあります。営業の電話で勧められたから、という理由だけで決めないことです。次の章でお話しする「採用数での記録」を持っていれば、営業の話を自分の数字で確かめられるようになります。
媒体の成績は「応募数」でなく「採用数」で見る
媒体ごとに「何人応募が来たか」だけでなく「何人採用できたか」を記録しましょう。応募が多くても面接に来ない媒体、応募は少ないのに採用につながる媒体——警備の場合、この差がはっきり出ます。応募数だけで判断すると、「にぎやかだが採れない媒体」にお金を注ぎ続けることになります。
記録といっても、難しい仕組みは要りません。応募者の名前の横に「どの媒体から来たか」を一列書き足すだけです。応募日・媒体・面接に来たか・採用したか。この四つが並べば、例えば「広告費10万円でA媒体から採用1人なら、A媒体の採用単価は10万円。B媒体は無料で採用1人だから採用単価はほぼゼロ」といった計算が自分でできます。三か月も続ければ、自社にとって強い媒体と弱い媒体が数字ではっきり見えてきます。この数字を持っている会社と持っていない会社では、媒体選びの精度がまるで違います。記録のやり方は採用管理をエクセルでやる限界と記録のはじめ方をどうぞ。
もう一つ、記録すると見えてくる大事なものがあります。それは「面接に来ない応募」の多さです。私たちの親会社では、面接約束のうち約4割が当日に来ませんでした。媒体によってこの割合も変わります。応募から採用までの間のどこで人が消えているかが分かれば、直す場所も決まります。
よくある質問
Q. 無料の媒体だけで採用はできますか?
できる場合もあります。とくに中高年の施設警備であれば、ハローワークの求人票を磨くだけで応募が動くことは珍しくありません。ただし「急いで何人もほしい」ときには、無料だけでは間に合わないことが多いのも事実です。無料は応募が来るまでの時間を自分で選べないからです。無料で土台を作り、急ぎの分・足りない分を有料で足す、と考えるのが現実的です。
Q. 有料媒体はどれを選べばいいですか?
初めてなら、少額から始められて途中で止められるクリック課金型が試しやすい選択です。ただ、それ以上に大事なのは、どの媒体を選ぶかより「選んだあとに採用数で成績をつけること」です。一つ試して記録を取り、数字を見て続けるかやめるかを決める。この回し方さえ身につけば、媒体選びの失敗は小さくて済みます。
Q. 求人を出しても応募が来ません。媒体を変えるべきですか?
媒体を変える前に、求人の中身を疑ってください。同じ媒体でも、仕事内容の具体性・給与の見せ方・写真の有無で応募数は大きく変わります。媒体を替えても文章が同じなら、結果もだいたい同じです。まず一つの媒体で文章と写真を見直してから、媒体の入れ替えを考えるのが順番です。
Q. 応募は来るのに採用まで至りません。媒体が悪いのでしょうか?
媒体の問題とは限りません。応募から面接までの間で人が消えているなら、原因は折り返しの遅さや面接日程の組み方にあることが多いです。まず「応募→連絡→面接→採用」のどこで減っているかを記録で確かめてから、直す場所を決めましょう。
Q. 求人はずっと出し続けるべきですか?
無料の三本柱は、欠員がなくても出し続けておくことをおすすめします。警備は欠員が急に出る仕事です。ふだんから求人が見える状態にしておけば、いざというとき応募までの立ち上がりが早くなります。一方、有料はメリハリをつける道具です。必要な時期に開いて、埋まったら閉じる、でかまいません。年間のどの時期に応募が動きやすいかは会社ごとに違うので、これも記録を続けるうちに自社なりの傾向が見えてきます。
まとめ
求人をどこに出すか。順番は、無料の三本柱 → 応募対応の体制 → 有料で増やす、です。ハローワーク・求人検索サイトの無料枠・自社採用ページの三つをまず整え、応募にすばやく折り返せる体制を作る。そのうえで、掲載課金・クリック課金・成功報酬という有料の三つの型から、自社の急ぎ具合に合うものを選ぶ。そして媒体の成績は、応募数ではなく採用数で記録して比べる。
お金をかけること自体は悪いことではありません。悪いのは、穴の空いたバケツのまま蛇口を開くことです。まずは自社の三本柱がそろっているか、応募への折り返しは早いか、この二つを点検するところから始めてみてください。今日ハローワークの求人票を読み返す、自社の名前で検索してみる。それだけでも、直すべき場所はきっと見つかります。次回は、三本柱の一つ目、ハローワークの求人票の書き方を掘り下げます。
