警備員の面接は、時間にすれば30分ほどです。この短い時間で何を見て、何を聞くべきか。逆に、聞いてはいけないことは何か。面接を担当する方に向けて、順番に整理します。
先に結論を言います。見るべきは「この人は無理なく働き続けられるか」。聞いてはいけないのは「仕事の適性と関係のないこと」です。面接は、立派な受け答えを引き出す場ではありません。3か月後、半年後も現場に来てくれる人を見きわめ、同時に「この会社で働きたい」と思ってもらう場です。
この記事では、当日の見きわめ方、面接の進め方と質問例、避けるべきとされる話題、警備業ならではの確認の手順、そして辞退を減らす工夫まで、明日の面接からそのまま使える形でまとめました。
- 見るべきは志望動機より「時間どおり来たか・連絡がつくか・挨拶ができるか」。この3つが現場の勤怠に直結します
- 本籍・家族・宗教など、仕事の適性と関係のない話題は聞かないのが「公正な採用選考」の考え方です
- 警備業の欠格事由の確認は、面接の雑談ではなく、所定の書面と手順で行います
- 応募者も会社を選んでいます。面接の印象と、面接後の連絡の速さが辞退を減らします
面接で見るべきは「働き続けられるか」
警備の面接で大事なのは、立派な志望動機ではありません。約束の時間に来たか、連絡がついたか、挨拶ができるか。この3つは、そのまま現場での勤怠と直結します。時間どおりに面接へ来られる人は、上番の時間も守れることが多い。連絡がつく人は、急な欠勤のときも黙って消えたりしない。挨拶ができる人は、施設の利用者やお客様の前に立たせられます。
加えて確認したいのが、「無理なく続けられる生活かどうか」です。具体的には次のような点です。
生活の無理を確認する
通勤手段と所要時間は必ず聞きましょう。片道1時間半の現場に自転車で通うつもりの人は、雨の日や冬の朝に足が遠のきます。希望する勤務日数と時間帯も大事です。本人が「週5で入れます」と言っても、家庭の事情や副業との兼ね合いで実際は週3が限界、ということはよくあります。「無理のない範囲で、何曜日なら確実に入れますか」と聞き方を変えると、本音が出やすくなります。
健康状態は「業務に必要な範囲」で
立ち仕事が長い、夏の屋外がある、夜勤があるなど、その現場の負荷を正直に伝えたうえで、「この働き方で体調面の不安はありますか」と聞きます。病歴を根掘り葉掘り聞くのではなく、任せたい業務を具体的に示して、本人に判断材料を渡すのがコツです。初日に元気な人より、3か月後も来てくれる人を選ぶ。これが警備の面接の軸です。
見るポイントは紙に書いて共有する
面接官が複数いる会社なら、見るポイントを紙に書き出して共有しておきましょう。「時間どおりに来たか」「連絡がついたか」「挨拶ができたか」「通勤に無理がないか」「入れる曜日と時間」。この5項目に丸をつけるだけの簡単な表で構いません。人によって見る基準がばらばらだと、採ってから「なぜこの人を採ったのか」がわからなくなります。紙が1枚あるだけで、面接の質は安定します。
30分の面接の進め方と質問例
面接の流れを決めておくと、聞き漏らしがなくなり、面接官による当たり外れも減ります。30分なら、次の配分が目安です。
最初の5分:緊張をほぐす
「今日はここまで迷わず来られましたか」「暑い中ありがとうございます」。道中の話や天気の話で十分です。応募者が緊張したままだと、本当の姿が見えません。面接は尋問ではなく、お互いを知る場だという空気を最初に作ります。
中盤の15分:生活と希望を確認する
質問の例を挙げます。「ご自宅からここまで、何でいらっしゃいましたか」「週に何日くらい働きたいですか。逆に、入れない曜日はありますか」「これまでのお仕事で、一番長く続いたものは何ですか。続いた理由は何だと思いますか」。最後の質問は特におすすめです。長く続いた理由を聞くと、その人が働きやすい環境の条件がわかります。前の仕事を辞めた理由を問い詰めるより、ずっと多くのことが見えてきます。
終盤の10分:仕事を正直に説明し、質問を受ける
現場のきついところも隠さず伝えます。「夏は暑いです」「最初は立ちっぱなしで足が痛くなります」。入社後に「聞いていた話と違う」と思われることが、早期退職の大きな原因だからです。そして最後に「何か不安なことはありますか」と聞く。この1分が辞退を減らします。
聞いてはいけないとされる質問
厚生労働省は公正な採用選考の考え方として、本人の適性や能力に関係のない事柄を応募用紙や面接で尋ねないよう求めています。たとえば次のようなものです。
本籍・出生地、家族の職業や収入、住宅の状況など
宗教、支持政党、思想、尊敬する人物、購読新聞など
結婚・出産の予定を聞く、年齢だけで判断する
※厚生労働省「公正な採用選考の基本」の考え方をもとに整理
難しいのは、こうした話題の多くが「悪気のない雑談」から出てしまうことです。「ご家族は反対されませんでしたか」「お住まいは持ち家ですか」「お子さんの予定は」。場を和ませるつもりの一言が、本人の適性と関係のない事柄に踏み込んでいることがあります。
知りたいことは「仕事の言葉」に言い換える
聞きたい中身の多くは、仕事に引きつけて言い換えられます。家庭の事情が心配なら、事情そのものではなく「入れない曜日や時間帯はありますか」と勤務条件を聞く。体力が心配なら、年齢ではなく「立ち仕事の経験はありますか。この現場は1回2時間ほど立哨があります」と業務内容で確認する。知りたいのは家庭や年齢そのものではなく、「シフトに入れるか」「業務がこなせるか」のはずです。そこだけを聞けば、失礼にもならず、必要な情報はそろいます。
警備業ならではの確認は「所定の手順」で
警備業には法律上の欠格事由(警備員になれない条件)があるため、その確認に必要な事項は所定の手続きの中で行います。ここは面接の雑談で聞くのではなく、会社として決められた書面と手順で確認するのが正しいやり方です。
面接の場で口頭で「前科はありますか」などと切り出すのは、避けたほうがよいとされています。応募者にとって答えにくいうえ、口頭のやりとりでは会社側にも確認した記録が残りません。採用の手続きに入る段階で、必要な書類を案内し、決められた様式で確認する。この流れを社内で統一しておけば、面接官が個人の判断で際どい質問をする必要がなくなります。
面接で伝えるべきことがあるとすれば、「警備業は法律で定められた確認手続きがあるので、採用の際は書類のご用意をお願いします」という案内までです。手順が決まっていれば、面接官も応募者も迷いません。
面接は「選ぶ場」であり「選ばれる場」
忘れてはいけないのは、応募者もあなたの会社を面接しているということです。マイナビの転職動向調査2024年版によると、転職者は平均8.8社に応募し、3.6社の面接を受けています。つまり応募者は、ほかの会社と比べながらあなたの会社の面接を受けているのです。
面接官の態度が横柄だった、質問が答えにくかった、会社の説明が雑だった——それだけで内定辞退は起きます。逆に言えば、面接の印象は他社と差をつけられる場面でもあります。時間どおりに始める。座って話せる場所を用意する。飲み物を出す。話を最後まで聞く。どれもお金のかからないことばかりです。
そもそも面接まで来てもらえないという悩みがあるなら、原因は面接より前の段階にあります。応募が面接につながらない会社の共通点もあわせてお読みください。
面接のあとが勝負:連絡はその日のうちに
警備の採用は、スピードで決まる場面が多い仕事です。私たちの親会社である警備会社では、応募から13分で初回の電話をかける体制を作りました。それでも、面接の約束をした人の約4割は当日に来ませんでした。応募者は複数の会社に同時に声をかけていて、先に決まったところへ流れていくからです。
面接まで来てくれた人に対しても、同じことが言えます。「結果は1週間後に郵送します」では、その間に他社で決まってしまいます。合否の連絡は、できればその日のうちに。採用したい人には、面接の場で条件を伝えてしまうのも一つの手です。詳しいやり方は警備員採用で「その場で内定」を出す方法にまとめました。
不採用の連絡も、早く、丁寧に。警備業界は狭く、応募者は地域の生活者でもあります。「あそこは連絡が遅い」という評判は、次の応募者を減らします。
よくある質問
Q. 志望動機があいまいな人は、落とすべきですか?
いいえ、それだけで落とす必要はありません。「家から近いから」「シフトが合うから」は、警備の応募理由として自然で、むしろ長続きの材料です。家から近い人は通勤が苦になりません。志望動機の立派さより、時間を守れるか、連絡がつくか、生活に無理がないかで判断しましょう。
Q. 健康状態は、どこまで聞いていいのですか?
業務に必要な範囲で確認するのが原則とされています。任せたい業務の内容(立哨の時間、夜勤の有無、屋外作業など)を具体的に伝えたうえで、「この業務で不安な点はありますか」と本人に聞く形が答えやすく、確認としても十分です。業務と関係のない病歴まで聞き出すのは避けましょう。
Q. 高齢の応募者を、年齢を理由に断ってもいいですか?
年齢だけで決めつけないのが公正な採用選考の考え方です。判断するなら、年齢ではなく「その業務がこなせるか」で見ます。実際、警備業はシニアの方が長く活躍している業界です。受け入れの工夫はシニア警備員に長く働いてもらう方法で紹介しています。
Q. 面接に普段着で来た人は、マイナス評価にすべきですか?
服装そのものより、清潔感で見ることをおすすめします。警備の応募者にはスーツを持っていない方も珍しくありません。それでも髪や爪が整っていて、挨拶がきちんとできるなら、制服を着れば十分に現場に立てます。逆にスーツでも、時間に遅れて連絡もない人のほうが心配です。
Q. 前の会社を短期間で辞めた人は、避けるべきですか?
辞めた事実より、理由と本人の説明の仕方を見ましょう。現場や会社との相性で短期離職になることは、警備業では珍しくありません。「どんな現場なら続けられそうか」を一緒に考える聞き方をすれば、責める空気にならず、配属のヒントも得られます。大事なのは、自社で同じ理由の退職が起きないよう、現場の実情を正直に伝えることです。
Q. 面接官は誰がやるのがよいですか?
できれば、採用の判断をできる人が直接会うのがよいです。社長や所長が自ら面接する会社は、その場で条件を提示でき、決まるのが速い。担当者しか同席できない場合は、「合否はいつ、誰が、どう連絡するか」を面接の最後に必ず伝えてください。連絡の見通しが立つだけで、応募者の不安は減ります。
まとめ
見るのは「続けられるか」、聞かないのは「仕事に関係ないこと」。この2つが警備員面接の軸です。志望動機の立派さではなく、時間・連絡・挨拶と、生活に無理がないかを見る。仕事と関係のない話題は避け、知りたいことは勤務条件と業務内容の言葉に言い換えて聞く。欠格事由の確認は、所定の書面と手順に任せる。
そして、面接はあなたの会社が選ばれる場でもあります。丁寧な面接と、その日のうちの連絡。この2つだけでも、採れる人は確実に増えます。まずは次の面接で、最後の1分に「何か不安なことはありますか」と聞くことから始めてみてください。面接に来てもらうまでの工夫は警備員の面接ドタキャンを減らす方法をどうぞ。
